2023年12月20日

新任の先生方へ 

 ブログの更新ほとんどしておらず・・・でも検索数をみると結構な方がこのブログを見てくださっております。
元々は、授業に関することを発信していこうと思い始めたものです。しかし、時代も変わり、新任の先生方が多くなってきた昨今、
もっと若い先生方へのサポートを充実しなては・・・と思うようになりました。(コロナもあり、美術教師同士の交流がなくなったきたこともある)
それぞれの地区の研究団体も活動が縮小され、地区によっては機能しない状況も・・・・。持続可能な研究会運営というものも考えていく必要があるな・・・と先日参加した東北造形教育研究大会の理事会で強く思いました。

ただでさえ、学校に一人の美術教師。

私だって、このままでいのか?と自問自答しながらの日々です。情報共有したり、周りはどんなことをやっているのか、どんなことを考えて授業をしているのか、気になりますよね。
そこで始めたのがyoutubeです。田中個人の番組ではなく、光村図書東北支社さんのお力を借りて作っているものです。

スクリーンショット 2023-12-20 10.23.02.png

コロナが5類になってから、様々な地域にお邪魔して話をする機会をいただきました。そこで痛感したのは、美術教師の減少率と高齢化、孤立、題材の固定化
などです。このyoutubeが少しでも若手の先生方の手助けになれば幸いです。
上の番組は、教科書を使ってみるという設定のものです。美術教師ってなぜか題材は自分で作るもの!と思われがちなんですが、ぜひ教科書を使ってもらいたい!
美術の先生がいない地域もたくさんあり、他教科の先生が美術を担当することもあります。そな時こそ、教科書を活用してほしい。
もし田中だったらという設定で考えたものです。この通りやれ!というものでもありません。

題材の考え方なども話していますので、一度覗いてほしいと思います。

スクリーンショット 2023-12-20 10.23.48.png

他にも色々ポイントを絞ってお話ししております。
大体10分から15分程度の動画ですので、空き時間などにでもいかがでしょうか。


今、新たな研究会を立ち上げようかと画策しています。テーマは若手支援です。
人とのつながりです。持続可能な研究活動ができるよう、美術教師がそれぞれの学校で輝けるよう、いろんな思いを持って立ち上げを考えております。
また告知します!



posted by 田中真二朗 at 10:42| 秋田 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術の授業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月11日

2022 造形実験について 【後編】

前編では一人の生徒の試行錯誤の様子をお見せしました。
後編もタイプの違う生徒の思考の様子です。

スクリーンショット 2022-12-10 7.58.32.png

スクリーンショット 2022-12-10 7.58.40.png

1時間目は全員が平面で表す活動となります。
ここでは、「折り紙をぐちゃぐちゃにしてはったところは緊張したときを表していて、折り紙を角を少し丸くして正常のときを表した。
真ん中の線は左側が正常のときの心の移り替わりを表し、右側が緊張したときを表した。心がチクチクしているような感じを表したいと思った。」と振り返っています。
発見したこととして、「緊張しているときは明るい色より暗い色、そしてチクチクしているような感じがした。」ようです。
個人の活動にはなるのですが、4人グループの座席ですので、周りの生徒がどのようなことをしているのか見えます。また、材料を取りに行く際に、いろんな生徒の実験状況を見ることもできます。興味があれば話かけ、自分も挑戦してみようという生徒も結構います。

スクリーンショット 2022-12-10 7.58.47.png

2時間目は立体に表してみようという時間です。
写真で見ると平面的な感じを受けますが、水引(糸のようなもの)を丸めたり立てたりしています。
ここでは「4色のひもを使って、不規則な形に組み合わせていきました。青いでかいひもで表したのは、いつもの感情で、赤、緑、紫の少し小さいひもは様々な気持ちを表して、緊張感を表しました。わざと、ひもの長さは適当にしました。」と書いています。

作りながら自分の感じる「緊張感」と擦り合わせていくのか、イメージトのギャップを感じているのか、さまざまな気づきがあります。
「緊張するときは、たくさんの気持ちが混ざり合って、緊張するんだと思いました。例えば、不安みたいな気持ちとかが緊張するときあると思いました。」とあるように、「緊張」というものを考えたときに、様々な気持ちが入りまじることを発見したようです。

スクリーンショット 2022-12-10 7.58.53.png

色々と実験を重ねていくと、感情を色や形で表す方法と、材料の特性と関連させて考えていく生徒も増えてきます。
共通事項にあることをしっかりと考え、実体験を伴いながら知識として獲得していくんですね。

この時間は、「細い木の棒を複雑な形に組み合わせた。灰色と黒色のマスキングテープで感情が不安定なことを表した。わざと適当に手で木を折った。」
マスキングテープの簡易的な貼り付け、わざと適当に折った木、という「不安定さ」を表現したようです。面白いのは、プラ板を使って、表裏が見えるようにしているところです。すぐに剥がれそうな感じが見て取れます。そういった材料の特性をうまく使って表現しているのが興味深いです。


スクリーンショット 2022-12-10 7.59.00.png

スクリーンショット 2022-12-10 7.59.05.png

「たくさんの糸を使って、いつもの感情を表し、上から黒と灰色のマスキングテープを使って、緊張しているときの感情を表した。わざときれいにはらなかった。糸をぴんとのばして神経が張りつめている感じを表したかった。」
筋組織のような、神経系のようなピンと張った繊維が緊張感を表しています。
また、「マスキングテープを上からはると、糸の色がすけて見えて、いつもの感情が見え隠れしている感じがした気がする。」
これも材料の特性を活用し、薄いマスキングテープを使って見え隠れするような感じにしています。この見えるようで見えないといったことが緊張を表すことにつながることが分かったんですね。

スクリーンショット 2022-12-10 7.59.14.png

この時間はリモート授業での参加でしたが、自宅で色々と実験したようです。

スクリーンショット 2022-12-10 7.59.22.png

実験に熱心に取り組むと振り返りの時間があまり取れなくなってしまいます。
しかも、まだタブレットに慣れていない1年生でしたので、記録するのもやっとです。が、やはり記録してどんんアマナビがあったのか、どのようにして発見していったのかは残すべきと思います。

スクリーンショット 2022-12-10 7.59.40.png

こちらの画像は、上の生徒とは別のものですが、動画として残しておりました。色水が混ざり合う瞬間を残したいとのことでした。
面白いですね。タブレットがあるといろんなことを記録できます。絵で表現しづらいし、立体でも・・・では動画は?となったわけです。

スクリーンショット 2022-12-10 8.00.53.png

作品を作るという授業ではありませんが、生徒の思いとしては何か形に残すべきと思うのでしょう。このようにいろんな成果物が出てきます。
作品としても見応えまります。
残っているからこそ、どんな思い出作ったのか、どんなこと考えてやったのか、どんな緊張のとらえだったのか、話が弾みます。

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.03.png

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.16.png

共感する人もいれば、自分とは全く違うことを考えている人もいる。「そんこと考えてんの!?」とか、「こんな方法よく思いついたね!」とか教師にとって嬉しい言葉が教室に響いています。

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.26.png

この「造形実験」のキーはこのプレゼンテーションです。2時間取りまして、全員が発表します。これまで記録してきたものをそのまま話す人もいれば、自分の作ってきたもの、試してきたことを編集して話す人もいます。先にも書きましたが、「そんこと考えてんの!?」とか、「こんな方法よく思いついたね!」という反応です。非常に面白いです。
自分なりの考えが共感されたり、違いについて議論したりと造形感覚を対話を通して深めていく感じです。

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.32.png

このプレゼンではこのようなことを学びます。

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.41.png

他の人の発表を聞いて、このようにびっしりメモする生徒もたくさんいます。

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.48.png

スクリーンショット 2022-12-10 8.01.54.png

課題としては、こんな感じでしょうか。
1時間でリセットされるため、「次何しよっかな〜」というある意味自由な時間が生まれている。
この何をするか考えている時間が長くなると実験をする時間が減るために、中途半端な時間で終わってしまうという生徒が見られた。
(このような考える時間も大切なんですけどね)

動画編集をする生徒の中には、緊張するシチュエーションをダイジェストにしたyoutube番組っぽいものを作る生徒もいた。デフォルトの音楽を挿入することで本人は満足した感じになっていたが、造形的な視点からみると、果たしてどうなのか・・・と考える場面があった。


スクリーンショット 2022-12-10 8.02.01.png

あとはよく、受ける質問で、「なぜ緊張感なの?」があります。
人それぞれいろん捉え方ができるものがいいですね。そして、同じテーマの方がいいと思います。
ネガティブ系でなくても、ポジティブなテーマでも面白いかもしれません。
今度は、ポジティブなテーマで試してみようと思います。まあ、子供たちと一緒に決めていきます。

スクリーンショット 2022-12-10 8.02.13.png


今年あった長野の造形全国大会で発表したものをここに載せましたが、ご要望があればリモート等で詳しくお話しできますのでお声がけください。
滋賀県で来年にお話しする予定です。

学びが分断されてしまっているのは、大人のせいです。そもそも学びは分断なんかされてないんだと思います。
この造形実験は、いろんな学びが含まれています。教師側が思ってもいなかったところと関連させて考える生徒もいます。
何よりも、「作品を作ることが目的でない」という考えで授業をしたっていいのではないか?という一つの提案です。

何を描かせるか、何を作らせるか、→つくることを通して何を学ぶのか、どんな力が身につくのか、、、という考えです。
コンピテンシーベースの授業作りをしていくには、大きく考えを変えていく必要があります。VUCAの時代、予測困難な時代を生きていくことになる目の前の子供。「未来の大人」のために僕らはどんな授業をしていく必要があるのか、今が変わるチャンスだと思います。





posted by 田中真二朗 at 14:22| 秋田 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術の授業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年10月29日

2022【造形実験について】前編

前のアップは4月でした・・・。今年は、本当に忙しかった・・・。忙しかったというより、学校が変わったことによってこれまで通りに行かない
ことが多くあり、ほぼほぼ全て一からやらなければいけない・・・これが結構辛かったな〜と今振り返ると思います。
でも、学校が変わり、新たな出会いもあるし、新たな気持ちで授業を考えることができたので、それはそれでよかったです。
「なぜ、この授業をやるのか?」

「目の前の子どもにとって本当にこの授業は必要なのか?」

いつも通りにやってたらこんなこと考えずにやってしまうと思いますが、「常に」このことを考えながら授業をしていく必要があると思っています。

スクリーンショット 2022-10-29 15.57.27.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.57.15.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.57.38.png

今年になって、コロナ前のようにいろんな場所でお話をさせていただく機会が増えてきました。大変ありがたいことです。GIGAスクールもすでに「当たり前」にことになってきました。ほぼ全ての授業でICTを活用した授業がなされてきた感じです。
だからこそ、美術の授業、従来通りの授業でいいのか?と問いたい。

作品づくりが主流の授業で本当に資質能力が育つのか?

どうしても、「作品をつくらせる」ということ行きがちな美術教師(私も含めて・・・)。
みなさんもそうですよね?

でも、そうではない授業(作品をつくろうとしない授業)でもいいのでは?と考えています。
以前にもご紹介した「造形実験」という授業です。

スクリーンショット 2022-10-29 15.56.56.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.58.00.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.58.12.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.58.43.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.58.50.png

前回、造形実験をやってみて思ったのはこういうことです。結局、テーマが決まっているけど表現方法は自分で自由に選択できるよ・・・・的な授業でした。
当初の思惑とはちょっと違ったものとなってしまったのです。
これは、初めに書いたように、どうしても「作品をつくらせなきゃ」といういわば刷り込み的な思考があったのかもしれません。
ですので、今回は、より造形遊びの要素を強めるといいますか、より探究的な要素を強めた授業にしたわけです。

スクリーンショット 2022-10-29 15.58.57.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.59.05.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.59.23.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.59.31.png

スクリーンショット 2022-10-29 15.59.56.png

パワーポイントを活用して、毎時間の記録をパワーポイントにまとめてあります。
これは埼玉大学附属の小西先生の枠を使わせてもらっています。
この時間やるべきこと、やってみての感想、使ったもの、次の時間のこと などの内容です。GIGA始めたばかりということもあり毎時間書き込むだけでも時間が必要です・・・。でも、諦めない。いろんな場面で使わせて慣れてもらうしかありませんからね。毎週曜日を決めてタイピングデーというものを作りました。ICT委員会というものも!年一回、タイピング王決定戦も行いました笑。

それはいいとして、毎時間の記録を残すことは本当に重要だと思います。自分の学びを実感することにも繋がります。
デジタルポートフォリオっていうやつです。写真でも動画でも残せますからね。非常に便利です。

これまでもアナログでやってましたが・・・結構大変なんですよねあれ。写真印刷して渡して・・・・タイムラグもあるしね。

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.07.png

これくらいの文量なら書けると思いませんか?慣れてないので、書くことも面倒がって少ない感じもします。慣れると結構書いてくるものです。
ちょっとした考えでもメモ程度で残しておくと、自分の思考を俯瞰してみることもできますしね。

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.20.png

この生徒は、「緊張」と聞いて、自分が一番緊張するであろう「注射」を選択しました。
1時間目は平面で表す。
2時間目は立体で表す。
3時間目以降は自分に合った方法で表す。という流れで進めていきます。

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.25.png

平面で駐車する瞬間を表現したものを、今度は立体的に表そうとしていますね。腕の端をウネウネしてさせて緊張感を表そうと工夫しています。注射器をリアルにすることでより緊張感が出せたとも書いてあります。

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.31.png

この4時間目から作風がガラッと変わりました。
「緊張」という捉えを俯瞰して考えてみたようです。身近にある「緊張」というものをテーマに、子供っぽく大胆に表現したと書いてあります。そして、作りながら「緊張」について考え、人によって感じ方も違うことがあると理解したようです。

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.38.png

5時間目 さらに変化が起きます。作りながらどんどん「緊張」がわからなくなってきたと書いています。わからないながらも、「緊張」の概念を色や形で抽象的に表そうと試みています。紺色の道は永遠に続いていくこと、緑の藁は緊張の渦とのこと。
振り返りでは「完成のない作品作りたい」と書いています。作りながら自分で「緊張」の解釈を楽しんでいるようです。
いよいよ実験ぽくなってきました!

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.44.png

6時間目 もうすでにコンセプチュアルアートになってきました。包み隠すことによって「緊張」を感じさせるようなものをつくり上げました。
この経験から、多様な材料に興味を示したようです。

スクリーンショット 2022-10-29 16.00.49.png

7時間目 制作の最終段階です。
床に触れるか触れないか・・・という緊張感を表しています。長さを調節しながら何度も何度も作り替えながら試行錯誤していました。
ここで、緊張のイメージを表すことが分かったようです。さらに、記録写真にはないのですが、平面の紙を縦にしてそれをカメラで撮影しながら見えるか見えないかの瀬戸際を見せようと頑張っていました。映像表現にまで発展しながら、表現の可能性を探っていました。

造形的な視点を常に考えながら表現し、鑑賞し、考え自分なりの答えを出そうとしていました。
共通事項について、実感を伴いながら、また、表現と鑑賞を行き来しながら造形的な味方・考え方を高めている姿です。

この後は、2時間、プレゼンタイムとなります。このパワーポイント使って説明してもいいですし、新たに自分でスライド作って説明してもいいことにしました。

後編ではもう一人の実験過程を紹介しながら、この造形実験について考えていきたいと思います。









posted by 田中真二朗 at 17:07| 秋田 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術の授業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。