和菓子の実践は、私が大切にしている題材の一つです。
毎年毎年、子供たちへどのように和菓子と出合わせるか・・・悩みながら取り組んできました。
日本の伝統文化としての和菓子を知ってもらいたい。日本人の持つ繊細に季節を感じる感性を引き出させたい。そして何よりも、子供たちの暮らす地域(身近なものやことへの関心)のよさや美しさを感じ取ってもらいたい。こんな思いで授業をマイナーチェンジしてきました。
和菓子というものは、こういうものだ・・・というプレゼンから始めた導入は始めの頃のものです。10年も前のことでしょうか。学習指導要領にも教科書にも載っている題材でもあり、全国各地で行われる人気の題材だと思います。身近な自然を省略や強調、総合化するなどして形や色に置き換え一つの和菓子という作品に詰め込んでいく過程。この過程には日本人の感性を高めるしかけがたくさん隠されていると感じています。
浮世絵の鑑賞や模様の授業を経験しながら、「和」ってなんだろう?という疑問を持ち続けながら和菓子の題材で自分なりの答えを見つけられるように授業を構成したり、いろんな角度から導入の方法や発想や構想の方法を試してきました。
今年は・・・どうしたか。
ここ最近、学校での学び(他教科の学びも含めて)を関連づけて美術を通して学んでいくことに興味があります。
社会科での歴史などの知識と関連させる、理科のスケッチや実験と関連させるなど、美術を介すと面白いし、疑問も湧きやすい、そこからも他教科への知的好奇心を高められないか・・・そんなことを思いながら、学校に掲示されてある様々な学習の成果物を眺めています。
5月に目に止まった、国語科で行った「随筆」作品。清少納言の「春はあけぼの・・・」というものです。
清少納言のように、自分なりに感じる「季節の美しさ」を言葉として表現していくものです。子供たちの作品を読んでいくと、感性豊かに季節の移ろいを感じ取り、自分の言葉で表現しているではありませんか。さすが、国語科!こんなに感じ取ることができるのか!(子供たちに失礼だけど)と感動しました。

そうだ!この随筆を和菓子の導入に使ってみよう!とピンときました。
和菓子授業の前段階では、江戸の文化について浮世絵(リプロダクト)を秋田美大の尾澤先生と共に授業をし、その後、秋田県立近代美術館で浮世絵や判じ絵、庶民の遊び心を感じる鑑賞授業をしました。日本の文化を知る第二弾、世界と日本の模様についての授業。地域の自然(ここでは身近な自然の形)を感じ取りながら、その形を省略したり、強調したり総合化するなどしてオリジナルの判にしました。(消しゴムハンコ)
これらの判を使って、生徒自ら選択した生活用品に、目的を設定して模様を考える授業を行いました。
(これは後日またアップします)
さて、和菓子の題材です。
今年の初めに訪問した
水上力さんの情熱大陸をみんなで見ました。
和菓子への情熱、日本文化の伝承と新たな文化創造への挑戦。職人としての心構え。和菓子作りは格闘技だ、という言葉。
生徒は様々なことを感じたことだと思います。水上さんのIKKOANの作品集には生徒も度肝を抜かれてました。季節を72に分けていたという事実。そんなに繊細に季節を見ているのか・・・という問い。

和菓子を作る上で一番大切なのは、自分の「感性」です。季節の花や自然現象を自分のフィルターを通して発見し美しいと感じたり、いいなと思ったり。こうした過程を経験することで、これからの人生ちょっと豊かに過ごせるのではないでしょうか。
自分の住む地域には、どんな花が咲くのだろう。今の季節はどんな気候だろうか。特産品はなんだ?この時期の旬な野菜は?などなど、これまでの経験を生かし、また友達との会話を参考にしながら新たな視点を得て、じぶんの地域を見つめ直していきます。
次の時間、実際に和菓子を試食します。授業でお菓子を食べられる!というだけで生徒のテンションはMAXになります笑
まずは、匂い、そして見た目、切った感触、食べた時の舌触り、味。それぞれに生徒から感想を述べてもらい黒板に板書します。そうすると「感覚」を使っていることに気づきます。「そう、和菓子は五感を使った芸術なんです」というと「お〜!」
「あれ?聴覚は?」
一斉に和菓子に耳を傾ける生徒、そして爆笑。
「和菓子の名前じゃない?」と勘づく生徒がいたりするものです。「その通り!」
耳から聞いて、いろいろイメージできる名前をつける、これも和菓子を作る上で重要な要素となります。
そして、和菓子のデザインを構想する段階に入っていきます。
随筆を参考にしながら季節を決め、考えていく生徒。
1年生の時に行った有名絵画の未来を予想した際に使った画集を見て参考にする生徒。



図鑑や様々な資料をもとにイメージを広げる生徒。

和菓子の雑誌を見て、参考になるものを探す生徒。

実際に粘土を触りながら、こんなことができるかも!と考えていく生徒。
実に多様です。だから、一斉の学び合いというのは行わず、学びたければ自由に動いて学びに行け!という感じで授業を進めています。一人でやりたい人もいれば誰かに聞きながらやりたい人もいます。みんなんでワイワイ話しているうちに気づく生徒もいます。授業のめあてがあり、生徒がやってみたい!と思っていれば、授業形態を気にせずとも勝手に学んでいく姿が見て取れます。もちろん、悩んでいる生徒、Cの段階の生徒を見とって「指導」を入れていく時もありますが。





今年度の和菓子の導入。
いつも悩む生徒がたくさんいるものですが、なんかすんなりと自分の作りたいものに向かっていく感覚がありました。
どうしてだ?
表したいものを見つけることができない生徒がその年その年でいるのですが、今年は・・・「どっちにしようか迷ってます」という言葉多く聞きました。表したいものがあることが前提で、それらを選ぶことに迷う生徒が多くいました。
多分・・・
1 毎年行う実践。廊下には前年度の生徒作品が並びいつでも作品を鑑賞することができたこと。特に、2年生の清掃区域に和菓子が並んでいたことがそうなったのか。
2 職場体験で入った地域和菓子屋で実際に生徒デザインの和菓子を製作したこと。販売されることが通年で行われることで意識したか。
3 前回から続く日本の伝統文化の授業の積み重ねか。
生徒にアンケートをとって聴いてみたいと思います。
制作の模様は後日アップします。