後編もタイプの違う生徒の思考の様子です。


1時間目は全員が平面で表す活動となります。
ここでは、「折り紙をぐちゃぐちゃにしてはったところは緊張したときを表していて、折り紙を角を少し丸くして正常のときを表した。
真ん中の線は左側が正常のときの心の移り替わりを表し、右側が緊張したときを表した。心がチクチクしているような感じを表したいと思った。」と振り返っています。
発見したこととして、「緊張しているときは明るい色より暗い色、そしてチクチクしているような感じがした。」ようです。
個人の活動にはなるのですが、4人グループの座席ですので、周りの生徒がどのようなことをしているのか見えます。また、材料を取りに行く際に、いろんな生徒の実験状況を見ることもできます。興味があれば話かけ、自分も挑戦してみようという生徒も結構います。

2時間目は立体に表してみようという時間です。
写真で見ると平面的な感じを受けますが、水引(糸のようなもの)を丸めたり立てたりしています。
ここでは「4色のひもを使って、不規則な形に組み合わせていきました。青いでかいひもで表したのは、いつもの感情で、赤、緑、紫の少し小さいひもは様々な気持ちを表して、緊張感を表しました。わざと、ひもの長さは適当にしました。」と書いています。
作りながら自分の感じる「緊張感」と擦り合わせていくのか、イメージトのギャップを感じているのか、さまざまな気づきがあります。
「緊張するときは、たくさんの気持ちが混ざり合って、緊張するんだと思いました。例えば、不安みたいな気持ちとかが緊張するときあると思いました。」とあるように、「緊張」というものを考えたときに、様々な気持ちが入りまじることを発見したようです。

色々と実験を重ねていくと、感情を色や形で表す方法と、材料の特性と関連させて考えていく生徒も増えてきます。
共通事項にあることをしっかりと考え、実体験を伴いながら知識として獲得していくんですね。
この時間は、「細い木の棒を複雑な形に組み合わせた。灰色と黒色のマスキングテープで感情が不安定なことを表した。わざと適当に手で木を折った。」
マスキングテープの簡易的な貼り付け、わざと適当に折った木、という「不安定さ」を表現したようです。面白いのは、プラ板を使って、表裏が見えるようにしているところです。すぐに剥がれそうな感じが見て取れます。そういった材料の特性をうまく使って表現しているのが興味深いです。


「たくさんの糸を使って、いつもの感情を表し、上から黒と灰色のマスキングテープを使って、緊張しているときの感情を表した。わざときれいにはらなかった。糸をぴんとのばして神経が張りつめている感じを表したかった。」
筋組織のような、神経系のようなピンと張った繊維が緊張感を表しています。
また、「マスキングテープを上からはると、糸の色がすけて見えて、いつもの感情が見え隠れしている感じがした気がする。」
これも材料の特性を活用し、薄いマスキングテープを使って見え隠れするような感じにしています。この見えるようで見えないといったことが緊張を表すことにつながることが分かったんですね。

この時間はリモート授業での参加でしたが、自宅で色々と実験したようです。

実験に熱心に取り組むと振り返りの時間があまり取れなくなってしまいます。
しかも、まだタブレットに慣れていない1年生でしたので、記録するのもやっとです。が、やはり記録してどんんアマナビがあったのか、どのようにして発見していったのかは残すべきと思います。

こちらの画像は、上の生徒とは別のものですが、動画として残しておりました。色水が混ざり合う瞬間を残したいとのことでした。
面白いですね。タブレットがあるといろんなことを記録できます。絵で表現しづらいし、立体でも・・・では動画は?となったわけです。

作品を作るという授業ではありませんが、生徒の思いとしては何か形に残すべきと思うのでしょう。このようにいろんな成果物が出てきます。
作品としても見応えまります。
残っているからこそ、どんな思い出作ったのか、どんなこと考えてやったのか、どんな緊張のとらえだったのか、話が弾みます。


共感する人もいれば、自分とは全く違うことを考えている人もいる。「そんこと考えてんの!?」とか、「こんな方法よく思いついたね!」とか教師にとって嬉しい言葉が教室に響いています。

この「造形実験」のキーはこのプレゼンテーションです。2時間取りまして、全員が発表します。これまで記録してきたものをそのまま話す人もいれば、自分の作ってきたもの、試してきたことを編集して話す人もいます。先にも書きましたが、「そんこと考えてんの!?」とか、「こんな方法よく思いついたね!」という反応です。非常に面白いです。
自分なりの考えが共感されたり、違いについて議論したりと造形感覚を対話を通して深めていく感じです。

このプレゼンではこのようなことを学びます。

他の人の発表を聞いて、このようにびっしりメモする生徒もたくさんいます。


課題としては、こんな感じでしょうか。
1時間でリセットされるため、「次何しよっかな〜」というある意味自由な時間が生まれている。
この何をするか考えている時間が長くなると実験をする時間が減るために、中途半端な時間で終わってしまうという生徒が見られた。
(このような考える時間も大切なんですけどね)
動画編集をする生徒の中には、緊張するシチュエーションをダイジェストにしたyoutube番組っぽいものを作る生徒もいた。デフォルトの音楽を挿入することで本人は満足した感じになっていたが、造形的な視点からみると、果たしてどうなのか・・・と考える場面があった。

あとはよく、受ける質問で、「なぜ緊張感なの?」があります。
人それぞれいろん捉え方ができるものがいいですね。そして、同じテーマの方がいいと思います。
ネガティブ系でなくても、ポジティブなテーマでも面白いかもしれません。
今度は、ポジティブなテーマで試してみようと思います。まあ、子供たちと一緒に決めていきます。

今年あった長野の造形全国大会で発表したものをここに載せましたが、ご要望があればリモート等で詳しくお話しできますのでお声がけください。
滋賀県で来年にお話しする予定です。
学びが分断されてしまっているのは、大人のせいです。そもそも学びは分断なんかされてないんだと思います。
この造形実験は、いろんな学びが含まれています。教師側が思ってもいなかったところと関連させて考える生徒もいます。
何よりも、「作品を作ることが目的でない」という考えで授業をしたっていいのではないか?という一つの提案です。
何を描かせるか、何を作らせるか、→つくることを通して何を学ぶのか、どんな力が身につくのか、、、という考えです。
コンピテンシーベースの授業作りをしていくには、大きく考えを変えていく必要があります。VUCAの時代、予測困難な時代を生きていくことになる目の前の子供。「未来の大人」のために僕らはどんな授業をしていく必要があるのか、今が変わるチャンスだと思います。