2020年05月31日

3年生 「紙の可能性を探る 〜紙一枚で何ができるのだろう?」

3年生になるということは義務教育の最終段階でもあります。
学校を引っ張っていくという気持ちも芽生えますし、委員会活動や部活動などでも先頭に立ってやらなければいけません。
自分を変えてみよう!という気持ちは誰でもあるはずですが、特に3年生に進級する時こそ思いが強くなると感じています。

そんな時期の「新たな一歩を踏み出す靴」という題材。

新しい一歩を踏み出す時、どんな自分になりたいですか?と問いかけて始まります。

しかも、今回は「紙」しか使ってはいけないという条件付きです。
その前段階として「造形あそび」ではないですが、「紙」を様々な行為で変容させるワークを入れています。

「紙」は普段の生活では何かを書いたり、読んだりするものです。しかし、この素材の本当の凄さを知りません。
建築に使われていたり、物を運んだり、古来から様々な知恵によって「紙」は進化してきました。

【一つのものから新たなものを生み出すこと】

この考え方は是非3年生に知ってもらいたいことです。
学校教育はこれまで、みんなで一つの答えに向かってきました。
図工、美術はそれに対して一つのものから複数の答えを生み出す教科でもあります。(場合によっては一つの答えに向かう時もあります)

今までの移転とは違う視点でものを見る。試してみる。ということがすごく大切な時代になっていきます。
だから、この時期に「造形あそび」的な探究に近い授業を行うという目的もあるのです。


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紙一枚を渡して、「何ができる?」と聞くと、折り紙をしたり、飛行機を作ったり、丸めたり。
だいたいこんな感じです。
「では、この紙の質感をティッシュのようにしてみてください」というとみんな「???」となります。
ここから探求の始まりです。どうすればティッシュのようなふわふわ質感になるのか。
(この授業は、元 西目高校の黒木先生の実践を参考にさせてもらっています)

擦ったり、揉んだり、叩いたり。あの手この手でふわふわにしようと頑張ります。

時間は8分程度でしょうか。紙の一部がふわふわしてくると、もう止まりません笑


お互いの紙を触り合って質感を試したり、自分の方が高級ティッシュだ!と自慢したり、破れてボロボロになって凹んだりもします。

ここで、「どんな行為をしたのか」を聞き出します。
・揉む・叩く・絞る・擦る・削るなどなど。ここからさらに、「他に紙にできることある?」と聞くと、料理のように、色々な行為が挙げられます。

その言葉を板書し、さらに紙一枚を渡して誰もやらないようなことをやってみようと投げかけます。

それでできたものがこちら。(インスタグラムより)

紙1枚でどんなことができる?
何かを書いたり読んだりする「紙」だけど、様々な行為によって紙の表情が変容していきます。
材料加工の探求だけど、一つのモノから新たなモノを生み出すという考え方を学ぶことにもつながります。
圧縮パルプを作る強者が現れたり、染めの達人が生まれたり、かなりクリエイティブな時間で楽しすぎます^_^
#美術の授業 #紙の可能性  #bt誌上授業


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何かを書いたり読んだりする「紙」だけど、様々な行為によって紙の表情が変容していきます。
材料加工の探求だけど、一つのモノから新たなモノを生み出すという考え方を学ぶことにもつながります。
圧縮パルプを作る強者が現れたり、染めの達人が生まれたり、かなりクリエイティブな時間で楽しすぎます^_^

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特に、この質感は面白いです。
くしゃくしゃにした紙に墨を塗り、乾いた後にニスを塗る。そうすると革のような質感に変わります。

紙を重ねていくのにも、ちぎってやるのと、そのままやるのとでは大きく印象が変わります。
生徒同士刺激を受け合いながら、とにかくいろんなことを試すのです。


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最後は、紙が変容したものを鑑賞して「受ける印象」を言葉で付箋に書き貼り付けることをします。
コロナの影響もあるので、一度にはできませんが、少人数ごとにグルーピングして行います。

これが靴づくりのサンプルになるということです。

どんな自分になりたいのか、それを表すためにどんな靴の形状にするか、表面処理はどうするか、構想の一助になる、そんなサンプルです。



来週は、靴づくりのメイン、主題の生成と発想・構想です。

どんな自分をあらわすのか、今から楽しみです。










posted by 田中真二朗 at 11:01| 秋田 | Comment(0) | 美術の授業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月30日

1年生「植物の生命力を感じてみよう」

1年生は、好奇心の塊りと言いますか、乾いたスポンジと言いますか・・・とにかく最高にいいテンションで授業に臨んでくれます。
こちらもすごくやる気になります。

この時期は、美術室の外にある八重桜が満開になります。その他にも椿やたんぽぽ、胡瓜草などの野草も満開です。
(最近、携帯のアプリで「ハナノナ」という人工知能を使ったものが出まして、それを活用しています。https://apps.apple.com/jp/app/ハナノナ-app/id1490984087  これはすごくいいですね!花にかざすだけで名前が出てきますから。植物について理科で学んでいることもあり、結構多用しています。Facebookで教えてくれた方、ありがとうございます)

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燃えるように咲く、八重桜。これは女子のお気に入りの花です。
これでもか!というくらい花をつけて咲くものですから、生命力を感じずにはいられません。
でも同じ花を描いても、みる角度や構図の違いなどで全く違う絵になります。ここが、この授業の一番のポイントでもあります。

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この小さな花も、一生懸命生きている。雑草と言われる植物ですが、一つ一つに名前があり、厳しい自然環境の中で必死に生きようとしています。

普段の生活では気にも留めなかった道端の植物に目を向けることで、いろんなことを感じ取ることができるのです。

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この授業では、「どんな生命力を感じたか」「感じた生命力を何を使ってどのように描くか」主にこの二つを考え制作してもらいます。
「よ〜く感じて描いてね」というだけで、みんな真剣にモチーフの植物と向き合って描くんです。
よく見て!というとどうしても「うまく描かなきゃ」と思ってしまうんです。
よく感じて!は自分にしか感じることのできないものを表そうという心境になるんでしょうか・・・。


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新型コロナ感染拡大防止策として、天気の良い日は美術室の外(中庭?)を使うこともあります。


この授業の「主題」を生み出させるポイントは外に身を置いて、少しの時間自然を感じさせることです。
風を感じたり匂いを嗅いだり。土から抜いて根を見たり、花弁を分解したりと、生徒はいろんなことをしだします。そこから「あ!」とか「お!」という発見をして、次第に植物の「生命力」「力」のようなものを感じ取るのです。目には見えない「オーラ」を想像したりする生徒もいます。
[共通事項]に当たるポイントでもありますね。

画材は、色鉛筆、水彩色鉛筆、パステル、クレヨン、鉛筆です。
初めて出合う画材がパステルと水彩色鉛筆です。
YouTubeライブ配信のように、手元を映して画材使用のポイントを説明します。
(今思ったけど、これ録画しておけば毎年使えるな・・・)
今回はかなりの生徒がパステルに興味を持って使っていました。

そして、出来上がった作品がこちらです。

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この生徒は、たんぽぽの綿毛をどう表現するか色々試していました。
初めて使うパステルに苦戦しながら、でも、どれもいいな〜と。

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パステルは消しゴムで消せることを発見するや否や、光がさしこんでいるように描く生徒も現れます。そして、何人かで流行るのです(笑)

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エヴァンゲリオン好きの女子生徒はこんな作品に仕上げました。描きながら、「なんか病んでるのかなあ〜」とか言いながら、思わぬ色遣いに自分でも心配していました。面白い作品ですね。

この後は、みんなで相互鑑賞をして「一人一人の感じ方、表現の仕方の違い」を実感し、一人一人の表現の大切さを確認し合いました。

1年生で大切にしたいこと、それは「違い」を受け入れることです。
違って当たり前、だから他の人の表現をしっかりと受け止めようということにつながります。

自分にしか出せない「線」もあります、「色の組み合わせ」だって。そういうことを大切にさせていきたいものです。


今回ここで紹介した授業は、「造形的な見方・考え方を働かせる 中学校美術題材&授業プラン36」にも載っています。
興味のある方はぜひご覧ください。
https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-218028-6


そうそう、評価のポイントは、美術にノートに書いてもらった「どんな生命力を感じたか」の内容と、表現工夫点の関係性です。
作品表と美術ノートのメモ、作品、活動の様子で評価をしています。なぜ、背景はこの色なのか、どうしてこの構図にしたのかなど、教師側で知りたいポイントを作品表に載せています。それをもとに話を聞いてみたり、書くことが苦手な生徒を把握するためにも、全ての生徒に話を聞いて回っている感じです。

文章で表すことが苦手な生徒もいます。そんな生徒は早いうちに把握しておくことです。そうすることで、鑑賞の授業もそうですし、他の制作の際も活動の様子や発言などを丁寧に聞いてあげることで評価できますからね。美術は国語じゃないから、文章の上手い下手で決めるわけにはいきませんから。

ちなみに、B6サイズとB5サイズの画用紙を用意して好きな方を選ばせています。
描くことに苦手意識を持っている生徒が多くいるので、小さいものも用意してあります。




話は変わりますが、本校の社会の先生がすごく面白い方で(道徳の授業も素敵です)、尊敬しています。
1年生の授業は、「冷帯ではどんな暮らしをしてる?」という課題でした。
グループで絵で表現したり、レグブロックでつくってみたりしてみんなで考えを深めていました。
こんなところでも表現力って生かされるんですね。

ちなみにこのレゴは美術室にある発想用のレゴです。建築用レゴ(レゴ アーキテクチャー)で、白一色なんです。
写真アップしようと思いましたが、ちょっと不具合あってダメでした。すみません。



この次は、3年生の授業です。「紙一枚で何ができる?」というものです。








posted by 田中真二朗 at 22:02| 秋田 | Comment(0) | 美術の授業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月20日

やっとはじまった授業1 〜授業のオリエンテーション〜

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緊急事態宣言も解かれ、先日やっと1年生の授業を行いました。

前期は2時間続きの授業にしてもらい、1年生と楽しく授業しています。
反応もいいし、何よりもワクワクしている感じが伝わってくるのがいいです。
1クラス28人程度の規模。その中で12人の生徒が「図工嫌い」12人が「図工大好き」あとは普通。
「図工嫌い」の理由は、
・絵を描くのが嫌い →思うように描けないから
・自由に表現できない→想像するのが苦手
こんな理由です。
「図工好き」の中にも実は絵を描くのは苦手という生徒も多くいました。
クラスの半数以上が絵を苦手としている状況・・・。

どこの学校もこんな感じなんじゃないかと思います。どうでしょうか?


1時間目はガイダンス。
資料集を渡したり美術ノートを渡したり、授業で大切にすることや上にも書いたような簡単なアンケートをします。

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絵が苦手、という生徒をどうやって美術の楽しさに引き込むか。

私は毎年「植物の生命力を感じて」という題材を行います。
その前に一度絵が好きな人もそうでない人も同じ土俵に立たせることから始めます。
ジャンケンをして、出したポーズを描くのですですが、その手しか見ることができないような態勢にして描かせます。
5、6分くらいでしょうか。
要は絵が苦手という人は、そのものをよく見ないで自分の中にあるイメージに変換して描いてしまっている人が多いと思います。
だから、極端なやり方ですが、モノをまずは良く観察することから始めさせます。
目で追うのと同じように鉛筆も動かす感じです。
シワが手のひらに乗らずに何処かへ飛んで行ったり、爪がミサイルのように飛んで行ったり、描いたあとは目を閉じさせ、合図と共に見てもらいます。
もう大爆笑です。

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立体的なものを平面に表すことは実は非常に難しいことです。でも、上手い下手に関わらず、みんなが同じ土俵に経ってからスタートさせると
自然と安心感があるのか、あまり抵抗なく描くことに臨めるように思います。
アイスブレーク的な要素もあるこのスケッチ。賛否あるかと思いますが、私は毎年こうしてスタートしています。

さて、次の更新は生徒の制作の様子と作品をいくつか紹介します。








posted by 田中真二朗 at 20:29| 秋田 ☔| Comment(0) | 美術の授業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月18日

久々のブログ・・・宣伝ばかりですが。

すっかりご無沙汰になっていたブログです。

さて、新型コロナの影響で大変な思いをされている方も多くいると思います。
未だ学校再開はできずに、遠隔授業をしている方もいらっしゃれば、課題を出してそのまま・・・という方も
いると思います。

私のところは幸いにも学校が再開され、先週から通常通りの授業が再開しました。もちろん感染防止策を講じてです。
しかし、臨時休業の際は遠隔授業もできずに、やっと課題を出してそのまま・・・となってしまいました。
全国の先生方は、何とかして子どもに寄り添おうと今できる精一杯のことをされていることと思います。
授業のオリエンテーション動画を作成したり、まだ入ったことのない美術室を動画とメッセージで紹介したり、課題の導入を
ウェブ上で公開したりと、様々です。
私も臨時休業中にウェブ上でやろうと思いましたが、ネット環境が整ってない家庭が存在するという理由で「不公平」であると言われ
断念しました。できることをまずはやり、問題があればその都度みんなで考えて克服していきたいと思っていましたが。

でも、中にはウェブ上で単に課題などを与えてそれでいのか?という考えを持つ方もいます。確かに一理あります。
第二波、第三波の心配もされている状況です。いつまた休校になるか分からないのです。
できることとできないこと、やってみて何が問題なのか、どうすれば改善できるのか、そういった情報を共有してよりよい学びを
提供していくことが今必要だと思います。与えっぱなしはさすがに良くはないですが、どの先生方も休校明けのフォローは考えているはずですので。



授業再開、子どもたちとの再会や新たな出会いを楽しみにしている今、
新版の教科書の紹介が各社でされています。
「 自らを超えていける人に  真実を見極められる人に  新たな価値を生み出す人に 」
これは光村図書の国語科のページに載っている言葉です。

「言葉で未来を切り開け。歩き出す君に,ゆるぎない言葉の力を。新しい時代を生きる子供たちに,

私たちは次のような願いを込めて,教科書を作りました。

変わり続ける時代。だからこそ,

自らを超えていける人に。

真実を見極められる人に。

新たな価値を生み出す人に。

とってもいい言葉です。ぐっときます。美術でも言えること、学ぶということ、これらかの時代を
生きる子どもたちへ向けたメッセージです。
ブログをアップしてない間に様々なインタビューや鼎談などをさせていただきました。
一気にここで紹介したいと思います。


「どうする?美術の授業」

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https://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasho/c_bijutsu/dousuru/dousuru_page.pdf

北海道の山崎先生や更科先生との鼎談が載っています。

さらに、今回の「美術準備室17号」では、またまた山崎先生と更科先生と新版教科書について紹介しています。

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↓美術準備室 17号 「特集 令和3年度版中学校『美術』教科書のご案内」のページに飛びます。
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasho/c_bijutsu/junbi/17.html

武蔵野美術大学出版局からは「美術の授業のつくりかた」という本が刊行されました。
私も執筆者として参加させてもらっています。
読み応えかなりありの本です!ぜひ!

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https://www.musabi.co.jp/books/b463106/

最後は、美術出版エデュケーショナルさんのカタログ「BSS」の巻頭インタビュー記事のご紹介。
https://note.com/bss_educational/n/nf483a9ac6a0f

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シーナさんとの対談です。違う分野の方とお話しさせてもらうと、いろんな発見があります。新たなことが生まれる予感、ワクワク感が凄かったです。
もともと、「学び」はボーダレス。
これまで分断してきてしまったものを、少しずつつなげていくことが学校教育現場でなされていくのではないでしょうか?


一気に紹介してしまいましたが、少しずつ、日々の授業のことや考えを記していきたいと思います。


一日も早いコロナの収束を願っています。




posted by 田中真二朗 at 21:13| 秋田 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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